住宅に使用される危険物質

●ホルムアルデヒド

ホルムアルデヒドは刺激臭のある無色の気体で、35~37%水溶液をホルマリンといいます。

殺菌防腐剤として用いられるほか、ホルムアルデヒド入りの接着剤として合板やパーティクルボード等に広く使用されています。しかし、平成15年7月、改正建築基準法が施行され、内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材の面積が制限されるようになりました。

ホルムアルデヒドはアミノ酸や生体異物を代謝する際、内因的に生成し、ホルムアルデヒドに暴露されていない人でも、血液中ホルムアルデヒド濃度が2.61 ± 0.14 μg/g(ほぼ2.6ppm)との報告があります。
人体へは、濃度によって粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こすのです。皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、激しい刺激を受け、炎症になったりします。ホルムアルデヒドはWHOの下部機関である国際がん研究機関によりグループ1の化学物質に指定され、発癌性があると警告されています。

いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質のうちの一つとして知られています。建材、家具などから空気中に放出されることがあり、濃度によって人体に悪影響を及ぼします。

ホルムアルデヒドは、0.08 ppmあたりから臭いを感じ、3 ppmでは目や鼻に刺激が起こり、4~5 ppmでは涙が出たり、呼吸器に不快感が生じます。50 ppm以上になると、肺炎などを起こし死亡することもあります。長期的には、発がんの可能性もあると言われています。

(ppmとは、空気中における汚染物質等の微量な重さ(濃度)の単位で、ホルムアルデヒド濃度1ppmとは、1㎥の空気中に1のホルムアルデヒドが含まれている状態です。)

2009年国際がん研究機関のモノグラムでは、骨髄性白血病の原因物質として特定されています。2010年米国環境保護庁(EPA)統合リスク情報システムでは白血病、ホジキンリンパ腫、上咽頭ガンのユニットリスク が公表されていて、年齢による感受性の違いを考慮したユニットリスクは、生涯1μg/㎥の環境下において1万人あたり1.1名がホルムアルデヒドを原因とするガンになると計算されています。
このユニットリスクではホルムアルデヒドの日本の室内環境ガイドラインと比較して1,000倍厳しい数値となっています。ちなみに大気環境基準のベンゼンは許容できる発ガンリスクとして10-5が運用されており、ホルムアルデヒドの10-4は10倍厳しい数値となります。なお、IRISによるユニットリスクでは年齢による感受性の違いを「成人と比較して2歳児未満の乳児に対して10倍、16歳未満の若年層には3倍のリスクがある」とされています。またホルムアルデヒド暴露と小児喘息に関する複数の疫学研究を総合的に評価した結果、有意な関連性があると結論付けています。
2011年フランスで、公共の保育所・学校等の指針値を現在の100μg/㎥から2015年には30μg/㎥、2023年から10μg㎥とする省令が施行されているのです。

●トルエン

トルエンは無色の液体で、接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として用いられる他、溶媒として一般的に用いられ、ペンキ、塗料用シンナー、多くの化学物質、ゴム、印刷用インク、接着剤、マニキュア、皮なめし、殺菌剤等、様々なものを溶解することができるためさまざまな住宅材に使用されます。ポリウレタンの原料であるトルエンジイソシアナートをはじめ、フェノール、トリニトロトルエン等の有機化合物の原料でもあります。
シンナーのような芳香があり、自動車等のエンジンのアンチノッキング剤としてガソリンに添加されることがあります。

トルエンの臭いを感じる濃度は0.048 ppmあたりからで、高濃度になると目や気道に刺激が起こり、疲労、吐き気、それに、中枢神経系にも影響を与え、ひどい場合には、精神錯乱などをきたすこともあります。また、意識低下や不整脈を起こすことがあります。

トルエンは通常の芳香族炭化水素と同様に芳香族求電子置換反応の基質となる。メチル基の存在により、ベンゼンの約25倍の反応性を持っている。

トルエンは穏やかなスルホン化によりp-トルエンスルホン酸を生成します。また酸化鉄の存在下、塩素により塩素化反応を起こし、オルト・パラアイソマーのクロロトルエンを生成します。ニトロ化ではオルト・パラアイソマーのニトロトルエンを生成しますが、加熱することでジニトロトルエン、最終的には爆発性のトリニトロトルエンを生成します。ハロゲン化反応はフリーラジカル条件下でも進行し、そのときハロゲンはメチル基に入ります。
例えばトルエン中にNBSとAIBNを加え加熱すると、臭化ベンジルが生成することになります。

トルエンのメチル基も他の反応試剤により酸化反応が進行します。トルエンは酸化により反応中間体であるベンジルカチオンを生じさせ、続く水との反応によりベンジルアルコールを生成することができるのです。
生じたベンジルアルコールはさらに酸化されベンズアルデヒドさらには安息香酸となる。またトルエンは過マンガン酸カリウムにより安息香酸を生成するが、その一方でクロム酸化によりベンズアルデヒドを生成します。

トルエン蒸気の吸入には中毒性があり、強い吐き気を催します。長期にわたり繰り返し吸入を続けた場合、回復不能の脳障害を負うことが確認されています。トルエンは液体からの蒸気吸入だけではなく土壌汚染、地下水汚染等により経皮・経口で体内に入る可能性があるなど、塗料や樹脂などの建材の溶剤として用いられたトルエンが室内に放出されることがあり、シックハウス症候群の原因物質の1つであると言われています。また排気ガス等にも含まれていることがあります。

トルエンは代謝によりその大部分が排出されますが、トルエンは水への溶解度が低いため、汗や尿といった通常の経路では排出することができないため、代謝によってより水溶性の高い物質になる必要があるのです。トルエンのメチル基は芳香環部分と比較して酸化されやすく、そのためヒトの体内に吸収されたトルエンの95 %は、シトクロムP450によりメチル基部分が酸化されてベンジルアルコールとなります。この代謝経路では残りの5%が環が酸化されたエポキシドとして残留します。このエポキシドの大部分はグルタチオンと複合体を形成するのですが、細胞に対する深刻な毒性は避けられないとされています。

また、トルエンの触媒的水素化はその芳香族性のため進行しにくいが、高圧の水素添加によりメチルシクロヘキサンを生成します。

●キシレン

キシレンは無色でガソリンに似た臭いがあります。トルエンと同様に、接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として用いられる他、アンチノッキング剤としてガソリンに添加されることがあります。

高濃度ではトルエンと同様の生体影響があります。200 ppm程度の濃度で明らかに目、鼻、のどが刺激されます。

3種類の異性体、o-キシレン(1,2-ジメチルベンゼン)、m-キシレン(1,3-ジメチルベンゼン)、p-キシレン(1,4-ジメチルベンゼン)が存在し、いずれも可燃性で、煤を出して燃えます。毒劇法により医薬用外劇物に指定されています。日本では製造・使用・廃棄に関して、管理・届け出が必要な化学物質としてPRTR法の第一種-30 にて指定されているほどです。

●パラジクロロベンゼン

パラジクロロベンゼンは通常無色または白色の結晶で、特有の刺激臭を有します。家庭内では衣類の防虫剤やトイレの芳香剤として使用されています。

通常の使用の範囲ではヒトへの健康被害の根拠は示されていないが、高濃度では害を及ぼす可能性があると言われています。家庭での非常に高濃度での使用は、目眩、頭痛、肝臓障害を起こします。生命に異常をきたすという根拠はまだありません。しかし母乳中のジクロロベンゼンを検出したという研究もあります。

子供は大人よりもこの物質にさらされるリスクが高く、家庭の防虫剤、トイレの消臭剤の誤飲などの危険を伴います。子供に対する同物質の影響についての詳細は乏しいと言えますが、恐らく大人と同様の影響だと言われています。直接皮膚に接触させたりしないなど注意は必要です。

15~30 ppmで臭気を感じ、80~160 ppmでは大部分の人が目や鼻に痛みを感じます。

●エチルベンゼン

エチルベンゼンは無色で特有の芳香があります。トルエンやキシレンと同様に、接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として用いられます。また、衣服を食い荒らす虫、カビなどを忌避するための防虫剤や、ゴミの容器などの消臭剤として用いられます。防虫剤として、日本語圏ではパラゾールやネオパラエース、などの商品名で知られています。

10 ppm以下でも臭気を感じ、かなりの高濃度(数千ppm)で暴露されると、めまいや意識低下等の中枢神経症状が現れます。

●スチレン

スチレンは無色ないし黄色を帯びた油状の液体で、特徴的な臭気を有します。家庭内ではポリスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、ABS樹脂、イオン交換樹脂、合成樹脂塗料等に含まれる高分子化合物の原料として用いられています。これらの樹脂を使用している断熱材、浴室ユニット、畳心材等の他、様々な家具、包装材等に未反応のモノマーが残留していた場合には、室内空気中に揮散する可能性があります。

60 ppm程度で臭気を感じ始め、200 ppmを超えると強く不快な臭いに感じるといいます。600 ppm程度で目や鼻に刺激を感じ、800 ppm程度になると目やのどに強い刺激を感じ、眠気や脱力感を感じるようになります。

●クロルピリホス

クロルピリホスは有機リン系の殺虫剤で、家庭内では防蟻剤(しろあり駆除)として使用されてきました。しかし、平成15年7月、改正建築基準法が施行され、居室を有する建築物への使用が禁止されました。

クロルピリホスによる軽症の中毒症状としては、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気等があり、重症の場合には、縮瞳、意識混濁、けいれん等の神経障害を起こすことが報告されています。

●フタル酸ジ-n-ブチル

フタル酸ジ-n-ブチルは無色~微黄色の粘ちょう性の液体で、特徴的な臭気を有します。主として塗料、顔料や接着剤に、加工性や可塑化効率を向上させるために使用されます。

フタル酸ジ-n-ブチルに高濃度に暴露すると、目、皮膚、気道に刺激を感じます。

また、シックハウス症候群の話からはそれてしまいますが、フタル酸ジ-n-ブチルは、1998年に環境庁が示した「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」、いわゆる“環境ホルモン”としてリストアップされた67物質の一つに挙げられています。“環境ホルモン”とは、「動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質」と定義されています。さらに、フタル酸ジ-n-ブチルは、環境実態調査で検出された最高値と、内分泌攪乱作用が疑われる最低濃度との差が比較的小さいこと等の理由から、リストアップされた67物質のうちリスク評価を優先的に実施する8物質の中にも選定されています。

●テトラデカン

テトラデカンは無色透明な液体で、石油臭を有します。塗料の溶剤に使用されるほか、家庭内では灯油が発生源となります。

中毒の情報はあまりありませんが、高濃度では刺激性及び麻酔性があるとされています。

●フタル酸ジ-2-エチルヘキシル

フタル酸ジ-2-エチルヘキシルは無色~淡色の粘ちょう性の液体で、特徴的な臭気を有します。代表的な可塑剤で、壁紙、床材、各種フィルム、電線被覆等様々な形で利用されています。

フタル酸ジ-2-エチルヘキシルとの反復または長期間の接触により、皮膚炎を起こすことがあります。

また、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルは(8)フタル酸ジ-n-ブチルと同様に、環境庁が示した「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」のリストに挙げられ、かつ、「優先してリスク評価に取り組む物質」にも選定されています。

●ダイアジノン

ダイアジノンは無色のやや粘ちょう性の液体で、弱いエステル臭を有します。ダイアジノンは有機リン系の殺虫剤で、ペット用の首輪、あるいはマイクロカプセル化したゴキブリ用残留散布剤として使用されています。

ダイアジノンによる中毒症状は、(7)クロルピリホスと同様です。

●アセトアルデヒド

純品は無色の液体で刺激臭があり、薄い溶液では果実様の芳香があります。アセトアルデヒドは、エタノールの酸化により生成され、ヒト及び高等植物における中間代謝物でもあるため、様々な食物やアルコールを含むもの、またヒトそのものも発生源となります。また、喫煙によっても発生します。ホルムアルデヒド同様、接着剤や防腐剤に使用されているほか、写真現像用の薬品としても使用されています。

アセトアルデヒドは、いわゆる二日酔いの原因物質の一つとして知られています。蒸気は目、鼻、のどに刺激があり、目に入ると結膜炎や目のかすみが起こります。長期間接触すると、発赤、皮膚炎を起こすことがあります。高濃度の蒸気を吸入すると、気管支炎や肺浮腫、それに麻酔作用、意識混濁等が出現しますが、初期症状は慢性アルコール中毒に似ています。

●フェノブカルブ

フェノブカルブは無色の結晶で、わずかな芳香臭を有します。水稲、野菜などの害虫駆除に用いられているほか、家庭内では防蟻剤として用いられています。防蟻用の製品は、一度に高濃度で揮発しないようマイクロカプセル化されており、土壌に適切に処理された場合、室内への放散は低いと言われています。

高濃度に暴露した場合、倦怠感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、腹痛等の中毒症状を起こし、重症の場合は縮瞳、意識混濁等を起こします。

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